士業で顧客と顧問契約を行なう場合、顧問契約書を交わすことになります。
この場合、顧問契約書の内容は「業務委託契約書」となっています。
私は税理士が2人目なので、各々契約書を交わしました。
見比べてみると、共通の項目がある一方、そうでないものもあります。
そこで、税理士顧問契約書の雛形(ひな形)を探ってみたいと思います。
A税理士「顧問契約書(業務委託契約書)」
A税理士の場合、「業務契約書」となっています。
○○会社(以下「甲」という。)と受任者 ○○[会計事務所名](以下「乙」という。)は、税理士の業務に関して下記のとおり契約を締結する。
第1条 委託業務の範囲
税務に関する委任の範囲は、次の項目とする。
1.甲の法人税、事業税、住民税及び消費税の税務書類の作成並びに税務代理業務の他、甲の年末調整事務及び法定調書作成事務に係る書類の作成並びに手続き代理業務
2.甲の税務調査の立ち合い
3.甲の税務相談
会計に関する委任の範囲は、次の項目とする。
4.甲の総勘定元帳及び試算表の作成並びに決算
5.甲の会計処理に関する指導及び相談
前期に掲げる項目以外の業務については、別途協議する。
第2条 顧問契約と解約
本契約の日より[1ヶ年]とする。
但し、契約期間の終了月の[15日]までに双方より何らかの意思表示のないときは、本契約は自動継続するものとする。
尚、第3条の改定については、本契約の継続を妨げないものとする。
解約についは解約希望月の15日までに申し出るものとする。
第3条 報酬の額
顧問契約及び決算料は、当事務所が定める報酬規程に基づく別紙料金表によることとする。
1.顧問料として月額○○円
2.法人税住民税及び事業税決算料として○○円
上記に含まれない業務報酬については、別紙料金表に基づき、別途協議の上決定することとする。また、上記報酬には別途消費税が付加される。
第4条 支払時期及び支払方法
報酬は原則として当月分を当月末までに甲より乙に支払うものとする。
但し、甲の都合により委託案件着手前に本契約を解除したときには、既に支払った報酬の返還を請求しない。
また、着手後に解除した時には、直ちに契約した報酬の全額を支払う。
第5条 特定個人情報等の取扱い
乙は甲との「特定個人情報の外部委託に関する合意書」に則り、甲から乙に開示又は提供された個人番号及び特定個人女王(以下「特定個人情報等」という。)を適切に取り扱うものとする。
第6条 資料等の提供及び責任
1.甲は、委任業務の遂行に必要な説明、書類、記録その他の資料(以下「資料等」という。)をその責任と費用負担において乙に提供しなければならない。
2.資料等は、乙の請求があった場合には、甲は速やかに提出しなければならない。資料の提出が乙の正確な業務遂行に要する期間を経過した後であるときは、それに基づく不利益は甲において負担する。
3.甲の資料提供の不足、誤りに基づく不利益は、甲において負担する。
4.乙は、業務上知り得た甲の秘密を正当な理由なく他に漏らし、又は窃用してはならない。
5.乙は、甲から提供を受けた特定個人情報等を他に漏らし、又は窃用してはならない。
第7条 情報の開示と説明及び免責
1.乙は、甲の委任事務の遂行に当たり、とるべき処理の方法が複数存在し、いずれかの方法を選択する必要があるとき、並びに相対的な判断を行う必要があるときは、甲に説明し、承諾を得なければならない。
2.甲が前項の乙の説明を受け承諾をしたときは、当該項目につき後に生じる不利益について乙はその責任は負わない。
第8条 設備投資などの通知
消費税の納付及び還付をうけることについては、課税方法の選択により不利益を受けることがあるので、甲は建物新築、設備の購入など多額の設備投資を行う時は、事前に乙に通知すうr。
甲が通知をしないことによる不利益について乙はその責任を負わない。
第9条 反社会的勢力の排除
甲及び乙は、それぞれの相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下「反社会的勢力」という。)ではないこと。
二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、本契約を締結するものでないこと。四 本契約の有効期間内に、自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2.甲又は乙の一方について、本契約の有効期間内に、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らかの催告を要せずして、本契約を解除することができる。
一 前項1号又は2号の確約に反する申告をしたことが判明した場合
二 前項3号の確約に反し契約をしたことが判明した場合
三 前項4号の確約に反する行為をした場合
3.
一 乙が前項の規定により、本件契約を解除した場合には、乙はこれによる甲の損害を賠償する責を負わない
二 本契約を解除した場合、乙から甲に対する損害賠償請求を妨げない。
第10条 その他
本契約に定めのない事項並びに本契約の内容につき変更が生じることとなった場合は、甲乙協議の上、誠意をもってこれを解決するものとする。
また、前条含め他事由において継続しがたい事由が生じた場合は一方的に契約を解約できるものとする。
第11条
本契約を証する為、本書2通を作成し、甲乙各々記名押印の上、各自1通を保有する。
B税理士「顧問契約書(業務委託契約書)」
A税理士の場合、「業務委託契約書」となっています。
○○会社(以下「甲」という。)と○○[会計事務所名+税理士名](以下「乙」という。)は、次の通り業務委託契約を締結する。
第1条(顧問業務の範囲)
乙が甲のために行う業務の範囲は、下記のとおりとする。
1.法人税申告書の作成
2.地方税申告書の作成
3.消費税申告書の作成
4.決算書及び勘定科目仕訳書の作成
第2条(法令の遵守)
乙は、顧問業務を職業専門家として最善の注意を持って遂行する。
2.乙は、偽りその他不正な行為により納税を免れるための計算書並びに申告書の作成、相談等には応じない。
第3条(作成責任)
計算書類の作成責任、税務書類の申告についての最終的な責任は、甲にあるものとする。
第4条(顧問報酬の額)
甲は、乙に業務委託報酬として次の金額を支払う。
1.税務顧問料 月額 金○○円(消費税抜)
2.決算報酬 年額 金○○円(消費税抜)
※2年目以降の決算報酬は○○円(消費税別)となります。
※消費税申告がある場合、別途○○円(消費税別)が必要となります。
第5条(顧問報酬の支払時期及び支払方法)
当該業務に関する報酬は、請求書到着日より14日以内に支払うものとする。
第6条(資料の作成及び提供)
甲は委嘱業務の遂行に必要な説明、書類、記録、その他の資料(以下、「資料」という)を十分な時間的余裕を持って乙に提供しなければならない。
2.甲は乙の請求があった場合、遅滞なく資料を作成しなければならい。
3.資料の不足、不備当に起因する不利益は甲の責任とする。
4.貴社から提供された資料についての正確性については検証しない。
第7条(事前通知)
甲は、甲の事業活動のうち、会社の財産、経営成績、納税額に大きな影響を与える行為(建物の建設、設備購入などの多額の設備投資、役員の報酬等の変更、役員の変更、株主の異動等)をする場合には、事前に乙に通知しなければならない。
第9条(守秘義務)
乙は、甲及び信用、名誉を損なう恐れのある情報及び本契約による顧問業務に関連して知り得た情報について、甲の承諾なしに第三者に開示または漏えいしてはならない。
第10条(損害賠償)
乙は、乙の業務の遂行に重過失があった場合に限り、債務不履行により甲に与えた損害を賠償するものとする。
ただし、甲が負う損害賠償の範囲は本契約の報酬年額を限度とする。
なお、いずれの当事者も特別損害、間接的損害および懲罰的損害ならびに現実化していない損失(逸失利益又は預貯金機械および事業機会の損失も含む)を賠償する責任は負わないものとする。
第11条(契約期間及び解禁)
本契約期間は、当該契約の締結日から平成○○年○月期に係る申告書提出日までとする。
ただし、同期間終了の1か月前までに、いずれか一方からの相手方に対し、本契約を延長しないという旨の意思表示がない限り、自動的に1年間延長されるものとし、以後もその例による。
第12条(信義則)
甲乙両者は、信義を重んじ、誠実にこの契約を履行し、甲の社業発展に努めなければならない。
第13条(疑義等の決定)
この契約に定めのない事項及びこの契約に関し疑義が生じた時は、甲と乙とが協議して定めるものとする。
この契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自その1通を保有するものとする。
税理士「顧問契約書(業務委託契約書)」の雛形
2人の税理士(事務所)の「顧問契約書(業務委託契約書)」の内容を見比べることで、雛形が見えてきます。
[共通事項]
前文
①委託業務(顧問契約)の範囲
②契約期間と解約
③報酬の額(顧問契約の額)
④支払時期及び支払時期
⑤資料の作成及び提供/責任
⑥本契約に定めのない事項等に関する協議
後文
Aにあって、Bにない主な項目は次のものです。
⑦特定個人情報等の取扱い
⑧反社会的勢力の排除
「特定個人情報等の取扱い」については、マイナンバー制が施行されたからでしょうか?
本「応用自在!契約書作成のテクニック」には「業務委託契約書」の章があり、かなり詳しい内容になっています。
項目は重要度によりA・B・Cの3段階があり、「重要度A」は必ず入れるべき項目なので、簡易的な契約書を作成するなら、これのみでも契約書は出来上がります。
「重要度A」の項目は以下の内容です。
(1)委託業務の範囲(上記の①)
(2)委託料等(上記の③④)
(3)契約期間(上記の②)
不思議なことに、上記の⑤の項目はありません。
また、⑥についは「重要度C」です。
ちなみに⑦はなく、「守秘義務」の項目があります。
これも、この本がマイナンバー制が施行される前だったからでしょう。
⑧は「重要度B」です。
契約書はトラブルが生じた時にどう対応するかを事前に決めたものです。
法律的観点から重要度が決められているようですね。
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